【国際政治】米国はウクライナに武器支援して借金を背負わせてるってホント?
一部報道によると、米国は「レンドリース法」を使ってウクライナに武器提供し借金を背負わせて儲けているとのこと。
これは事実なのでしょうか?
調べてみると間違いでした。これからご説明いたします。
【1】レンドリース法って何?
ウクライナ民主主義防衛レンドリース法(Ukraine Democracy Defense Lend-Lease Act of 2022)は2022年5月9日に制定された米国内法。ウクライナを含む東欧諸国への武器や物資の貸与と、それを迅速に行う権限を米国政府に与えるものになります。
レンドリースは「貸与」つまり貸出です。借りたものは返さなくてはならず、将来的にはウクライナは米国に代金を支払わなくてはなりません。ウクライナは武器支援を受けるほど借金を抱えることになってしまいます。
【2】使われていないレンドリース法
では、実際にウクライナにレンドリース法による武器貸出が行われているのでしょうか?以下ウクルインフォルムの記事(2023年9月20日)によると、レンドリース法は使われていません。
同時に、同法採択以降も、米国はウクライナに無償での武器供与を続けており、レンドリース法に基づいた武器の貸し出しは現在まで一度も行われていない。
【3】米国のウクライナへの武器支援は「タダ」
上記記事の裏付けとして、米国のウクライナへの武器支援がどのように行われているか調べてみました。
米シンクタンク「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」によると、米議会は2022年に合計1,131億ドル(日本円:約16兆円)の対ウクライナ支援予算を承認しています。
そのうち、ウクライナへの武器提供に直接関連するのは①Drawdown Replenishment(272億ドル)②Ukraine Security Assistance Initiative(180億ドル)③Foreign Military Financing Program(47億ドル)になります。
Congressionally-Authorized Emergency Ukraine Aid Enacted in 2022
Total Authorized | |
---|---|
Drawdown Replenishment | $27.2 billion |
Ukraine Security Assistance Initiative | $18 billion |
United States Military | $15.2 billion |
Foreign Military Financing Program | $4.7 billion |
Other Defense | $2 billion |
Subtotal, Defense | $67.1 billion |
Economic Support Fund | $26.9 billion |
International Disaster Assistance | $7.9 billion |
Assistance for Refugees | $6.6 billion |
Assistance for Europe, Eurasia, and Central Asia | $1.5 billion |
Other Nondefense | $3.1 billion |
Subtotal, Nondefense | $46 billion |
Total | $113.1 billion |
Memo: Total direct military support provided via PDA, USAI, and FMF | $25.9 billion |
各項目の詳細は以下の通りです。
①Drawdown Replenishment(PDA)
大統領権限(PDA)により米軍の備蓄在庫を迅速に他国に送るプログラムです。ウクライナへの武器支援は迅速性が求められており、HIMARS等の米国製兵器の大半は、この方法でウクライナに送られています。
このプログラムには返済の規定が無く、無償供与となります。
②Ukraine Security Assistance Initiative(USAI)
USAIは米国防省のウクライナに対する資金提供プログラムです。
米軍の備蓄在庫以外の兵器の新規調達費用、訓練費、物資調達費用等に使われます。
こちらのプログラムにも返済規定が無く、無償支援となります。
③Foreign Military Financing Program(FMF)
FMFは、他国が米国製兵器を調達する際に米国防省が調達資金を提供するプログラムです。
米国はNATO同盟国に手持ちの兵器(特に旧ソ連製)をウクライナに供与してもらい、同プログラムで資金を提供、埋め戻しとして米国製兵器を提供することでウクライナに武器支援を行っています。こちらもウクライナに支払い義務はありません。
その他、ウクライナを後方支援する米軍の維持管理費(United States Military:152億ドル)を加えると、実に671億ドル(9,7兆円)もの軍事支援が「タダで」ウクライナに対して行わていれるワケです。。。米国は敵に回すと恐ろしいですね。
【まとめ】
これまでご説明した通り、米国のウクライナへの武器支援は「タダ」であり、ウクライナが借金を背負うことはありません。
勿論、米国の対ウクライナ支援予算も無限とはいかないでしょうから、将来的にはレンドリース法が使われることもありうると思います。が、現時点(2023年9月20日現在)は上記の通りです。
情報は鵜呑みにせず、調べてみるものですね。